1.所得税は何に対してかかる税金でしょうか?
所得税は1年間(1月1日~12月31日)の個人の儲けにかかる税金です。
ポイントは上記の赤字の3つの部分です。
1-1. 計算の期間は1年間(1月1日~12月31日)
所得税の計算は1年間をベースに行います。1か月とか、半年とかではないということです。
また、その1年間も1月1日~12月31日の暦の期間となります。
会社が3月決算とか12月決算など、自由に決算月を決めることができるのに対して、個人の場合は1月1日~12月31日までの12月決算しか認められていないということです。
1-2. あくまでも個人がベース
所得税は個人の儲けを対象にします。
一方、会社の儲けは法人税が課税されることになります。
1-3. 「儲け」にかかります
「儲け」とは何でしょうか?
売上から経費等を差し引いたものが「儲け」です。会計上は「利益」といい、所得税では「所得」といいます。
たとえば、100万円の車を仕入れて130万円で売った場合、「儲け」は「売上130万円-仕入100万円=30万円」となり、この30万円に対して所得税がかかるということです。売上の130万円に所得税がかかるわけではありません。
では、次に所得税の計算が具体的にどのようになされているのかを見ていきます。
2.個人の儲けを10種類に分ける
個人といっても、サラリーマンをやっている人もいれば、フリーランスのような自営業の人、アパートの大家さんなど、多様です。
そこで所得税では、個人の儲けを次の10種類に分けることにしています。
この10種類の所得それぞれの内容は次のとおりとなります。
2-1. 利子所得
内容はいろいろあるのですが、私たちの日常の生活で出てくるものは、銀行に預けている預金の利子です。
銀行預金の利子にも所得税がかかるのですが、預金口座に利子が入金される際に天引き(源泉徴収)され、所得税が差し引かれた後の金額が預金口座に入金されます。
その後の処理は特になく、利子所得にかかる所得税の手続はこれで完了となります(源泉分離課税といいます)。
この預金の利子以外に、公社債の利子や国外で支払を受けた預金の利子については、別の処理になるのですが、ここでは割愛します。
2-2. 配当所得
株や証券投資信託の配当金、分配金のことです。これらの配当金、分配金にも所得税がかかります。
2-3. 不動産所得
土地や建物などの不動産を貸すことによる儲けです。
売上である収入金額から必要経費を差し引くことで計算します。
2-4. 事業所得
フリーランスや自営業者などの方が商売から得られる儲けです。ただし、アパートの大家さんなどは前述の不動産所得となり、事業所得にはなりません。
不動産所得と同じように、売上である収入金額から必要経費を差し引くことで計算します。
2-5. 給与所得
サラリーマンや会社役員などの給与のことです。
前述の不動産所得や事業所得は、売上である収入金額から必要経費を差し引くことで「儲け」である所得を計算するのですが、サラリーマンなどの給与所得者の場合、実際にかかった経費を差し引くことは認められておらず、「給与所得控除額」という経費の概算額を差し引くことで、「儲け」である給与所得を計算することになっております。
2-6. 一時所得
保険の一時金や満期返戻金、懸賞の賞金品が該当します。
2-7. 譲渡所得
資産を譲渡することによる「儲け」です。
100万円の車を130万円で譲渡した場合、130万円-100万円=30万円が「儲け」となりますが、これが譲渡所得となります。
ただし、車屋さんが自分の商売で車を売った場合には譲渡所得ではなく、事業所得となります。
2-8. 山林所得
山になる立木を伐採して売ったときの「儲け」です。
2-9. 退職所得
会社を退職したときにもらう退職金のことです。
2-10. 雑所得
上記のどの所得にも該当しない所得が雑所得となります。国民年金や厚生年金なども、この雑所得となります。
3. 税金を計算するベースとなる金額の計算
上記で個人の「儲け」を10種類の所得に分けましたが、さらに税金を計算するために、この10種類の所得を9種類の区分に再編成します。この金額が税金を計算するベースとなる金額となります(課税標準といいます)。
4. 所得控除額の計算
所得税の計算において、それぞれの個人の事情を考慮するために、所得控除があります。
配偶者控除や扶養控除、寄付金控除、医療費控除などがあります。
前述の「3. 税金を計算するベースとなる金額の計算」で計算した「課税標準」から、これらの「所得控除」を差し引くことになります。
5. 税金の計算
最後に「課税標準」から「所得控除」を差し引いた金額に税率を乗じることによって、所得税の金額を計算します。
税率については、「3. 税金を計算するベースとなる金額の計算」で計算した「課税標準」によって異なりますが、ここでは割愛します。
以上が大まかではありますが、所得税の計算体系となります。