会計士の個人ブログ

「安定」を買うために、どれだけ自由を売っているのか? — サラリーマンとマイクロ法人という選択

はじめに:「安定」という言葉への違和感

多くの人が口をそろえて言います。
「正社員は安定している」「公務員は安泰だ」「年金があるから老後はなんとかなる」。

けれど、ニュースを見れば、大企業の早期退職募集、公務員の給与カット、年金・医療・介護制度の先行き不安は日常茶飯事です。
それでもなお、私たちは「安定」という言葉にしがみつきがちです。

ここでは、「安定」を前提として生きるのではなく、自分で自由をつくりに行くという視点から、

  • 資本主義でお金を稼ぐとはどういうことか

  • なぜサラリーマンは構造的に負担が重くなりやすいのか

  • そこから距離を取るためにどんな選択肢があるのか

を、個人的な体験ではなく一般論として整理してみます。

1. 自由とは「選べるだけの経済的土台」である

「自由に生きたい」という言葉はよく聞きますが、実際の中身はかなり現実的です。

  • 嫌な仕事を無理に続けなくてもいい

  • 会社や組織に依存しすぎなくていい

  • 自分と家族の生活を、自分の判断で守れる

こうした自由を成立させる前提は、きれいごとではなくお金です。
自由とは、突き詰めると「人生の選択肢を自分で握れるだけの経済的土台」と言えます。

お金がなければ、

  • 会社にしがみつく

  • 国の制度にしがみつく

  • 誰かの好意にしがみつく

という「依存状態」にならざるを得ません。依存が強くなればなるほど、選択権は相手側に移っていきます。

2. 資本主義でお金を稼ぐシンプルな構造

資本主義のもとで、お金を得る仕組みは本質的にはシンプルです。

自分が持っている「資本」を市場に投じて、リスクを取ってリターンを得る

ここでいう「資本」は、ざっくりと次の2つに分けられます。

  1. 人的資本:働く力・スキル・知識・経験

  2. 金融資本:現金・株式・投資信託などのお金

一般的な人生パターンはこうです。

  • 若い頃:お金(金融資本)は少ないので、
    人的資本(労働力)を労働市場に「投資」して、給料というリターンを得る。

  • 中年〜老後:働く力が落ちてくるので、
    若い頃に蓄えた金融資本(貯金・投資・年金)からリターンを得て生活する。

人的資本は、

  • 資格や専門スキル

  • 実務経験

  • 信頼や評判

によって大きさが変わり、それが長期的な収入の限界値を決めていきます。

3. サラリーマンの「見えにくい負担」

ここから少し現実的な話になります。
「日本は所得税がそこまで高くない」というフレーズを聞くことがありますが、実際には税・社会保険のトータル負担で考える必要があります。

3-1. 年金・医療・介護の構造

ざっくりいうと、

  • 国民年金などは「払った額以上に受け取れる」設計に近い

  • その不足分や制度の赤字は、主に厚生年金・健康保険(サラリーマン)側から補填される

という構図があります。

さらにポイントなのは、

  • 会社が負担している社会保険料
     → 会計上は「会社負担」でも、実態としては人件費の一部
     → 制度がなければ本来は従業員の給与に回り得るお金

という点です。

「会社が半分払ってくれているから得している」という感覚は、現実とはズレています。

3-2. 生涯レベルで見るとどうなるか

一般的なサラリーマンの生涯年収を3〜4億円とすると、
税金と社会保険料で生涯1億円前後を支払うイメージになります。

  • 所得税・住民税

  • 厚生年金保険料

  • 健康保険料

  • 会社負担分も含めた「実質負担」

まで視野を広げると、サラリーマンは構造的に重いコストセンターとして扱われているという一面が見えてきます。

「働いてもお金が貯まらない」という感覚の裏には、こうした仕組みが静かに効いています。

4. 搾取構造から距離を取るための選択肢

では、こうした構造から完全に逃げることはできるのか。
現実的には「ゼロにする」のは難しくとも、負担の性質を変えることはできます。

その代表的な手段が、

  • 自営業になる

  • 法人(いわゆるマイクロ法人)をつくる

という選択肢です。

4-1. なぜサラリーマンより有利になりやすいのか

サラリーマンは、

  • 給与から税・社会保険料が天引き

  • 経費計上の余地がほぼない

という「もっともコントロールしづらい」形で課税されます。

一方、自営業・法人は、

  • 事業に必要な支出を経費として認めてもらえる

  • 所得の出し方・報酬の取り方を工夫できる

  • 場合によっては社会保険の入り方も選択肢が広がる

など、税・社会保険の設計余地が大きいのが特徴です。

4-2. マイクロ法人という考え方

マイクロ法人とは、簡単にいえば「自分自身を法人化する」イメージです。

  • 仕事を個人ではなく法人として受ける

  • 法人に利益を貯め、必要な分だけ自分に給与・配当として出す

  • 法人名義での経費や投資の選択肢が広がる

こうした仕組みを通じて、

  • 税負担率を抑える

  • 法人内部にお金を残し、将来の投資に回す

  • 場合によっては融資なども活用する

といった戦略が取れるようになります。
これは「ズルをする」という話ではなく、制度設計を理解したうえで、与えられたルールを有利に使うという発想です。

5. なぜ多くの人はこの選択をとらないのか

ここまで読むと、

「そんなに有利なら、みんなとっくにやっているのでは?」

という疑問が出てきます。

多くの人が実行しない理由は、たいてい次のようなものです。

  • そもそも仕組みを知らない

  • 手続きが面倒に感じる

  • 事業を始めるリスクを恐れている

  • 「会社から給料をもらう」のが当たり前だと思い込んでいる

つまり、能力や条件以前に、「選択肢として認識されていない」こと自体が大きな壁になっています。

6. 現実的なステップ:いきなり会社を辞めない

とはいえ、いきなり

明日から会社を辞めてフリーになる/法人をつくる

というのは、相当なリスクを伴います。

現実的な流れとしては、例えば次のようなものが考えられます。

  1. 今の会社で収入の土台を維持する

    • 生活費と最低限の安全網を確保

  2. そのうえで、副業を始めてみる

    • スキルを使った個人サービス

    • コンテンツビジネス

    • 小さな受託仕事 など

  3. 副業が一定規模になってきたら、法人化を検討する

    • 税・社会保険の負担を試算したうえで判断

  4. 本業と副業のバランスを見ながら、タイミングを見て独立も視野に入れる

重要なのは、

「安定した会社」ではなく
「自分の人的資本と、小さなビジネスの組み合わせ」で安定をつくる

という発想に切り替えていくことだと思います。

おわりに:「安定を買うために自由を売りすぎない」

  • 安定という言葉は心地よい

  • しかし、その安定の裏で、
    どれだけの税・社会保険、どれだけの拘束、どれだけの選択肢の放棄をしているか

ここを一度冷静に見直すことは、今の時代を生きるうえで避けて通れないテーマだと感じます。

サラリーマンでいること自体が悪いわけではありません。
ただ、

  • 「何も考えずに会社依存」なのか

  • 「会社を利用しつつ、自分の自由度を上げる準備をしている」のか

この差は、長期的にはかなり大きいはずです。

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