公認会計士のブログ

会計事務所で働いてみて分かった中小企業の経理の弱点

現在、会計事務所で30社ほどのお客さんの記帳や税務申告を担当しておりますが、業績が良い会社・悪い会社を問わず、こういう所がイケてないなぁと思うことがありましたので列挙しておこうと思います。

1.月次決算をしていない

決算期になったら1年分の資料を送ってくる会社さんが典型です。こちらも1年分の資料を一気に会計ソフトに入力しなければならないので大変なのですが、それよりも決算が締まるまで会社に利益が出ているのか分からない方が大変ではないのかなぁと思います。

法人税等の申告・納付の期限は決算日から2か月以内ですので、それまでには決算書は完成するのですが、決算日から2か月後に決算書を受け取って1年間の会社の業績が分かったとしても手の打ちようがないような気がします。

リアルタイムに会社の業績を把握するためには月次決算は必須です。

毎月、会計ソフトに記帳入力をして1か月単位で売上や仕入・売上原価、経費などの費用の金額を把握することで利益がいくら出ているのかを知り、それにより会社や個人事業主としてのかじ取りの方向を決めることができるようになります。

2.入出金ベースで記帳している

最近、あるクライアントさんからの依頼で営業部が作成した売上の資料と経理部が作成した会計資料の売上の金額が一致していないので調べてほしいとの依頼がありました。

営業部と経理部それぞれの資料を受け取って調べてみたところ、次のような結果でした。

営業部の売上の資料ではその月に発生した売上はその月の売上として記載されていました。たとえば、6月の売上はちゃんと6月の所に記載されていたということです。つまり、売上が発生したタイミングで売上を計上しており、これを「発生主義」といいます。

一方の経理部から受け取った会計資料では入金があった月に売上が計上されていました。たとえば、6月の売上が7月に入金された場合、7月の売上として計上されていました。つまり、入出金があったタイミングで売上を計上しており、これを「現金主義」といいます。

この売上の計上のタイミングの違いにより営業部と経理部で1ヶ月の売上の金額が異なっていたということです。

では、どちらの計上方法が良いのかですが、やはり「発生主義」による計上の方が望ましいです。売上という事実が発生したタイミングで売上を計上する「発生主義」の方が事業の実態が分かるからです。

入金や支払のタイミングは同じ売上であっても契約や取引先によって異なるものですし、極端な話、売上の半年後に入金という条件だった場合、入金がある半年まで売上の事実が会計帳簿に記帳されないため、会計帳簿を見ても事業の実態や損益が分からない状態になるからです。

3.社長と経理担当者の意思疎通が図れていない

意外とあるのですが、会社の全般的なことや社長に関連することを経理担当者に訊くと「私では分からないので社長に訊いてください」と言われることがあります。

社長と経理担当者との間に距離がある感じです。経理担当者は日常の定型的な会計処理は粛々と処理していくのですが、全社的なことや経営管理に役立つ全般的なことにはタッチしていないという典型的なパターンです。

あまり社長とコミュニケーションを取りたがっていない感じがする経理担当者もいらっしゃいます。社長に何か言うのを遠慮していたり、積極的に日常の定型的な会計処理以外のことをしても毎月の給料が増えるわけでもないので仕方がない面もあります(この点はサラリーマンのような雇用形態の限界ですね)。

経理というのは今までに発生した経済的実態を会計帳簿に記帳していくという記録係のような業務が主ですが、何か突発的なことが発生したときに社長にアラームを出すのも大切な仕事です。

ただ残念ながら、そこまでのことをしている経理部があるのは上場企業のような大きな会社であって、中小企業でそこまでのことができる経理担当者はいないのが現状ですね。このような中小企業では、記帳以外の経営に役立つ進言をするのは会計事務所の仕事でしょうね。

4.社長が経理・会計に関心がない

業績が悪くてボロボロの会社の社長に共通している点です。毎月の試算表を見て会社の業績を把握するという考えがなく、毎年の決算書すら見ているのか怪しい感じです。

業績が悪くて資金繰りが厳しいので関心があるのは銀行からの融資・返済のことや税金をいかに安くするのかという節税だけです。記帳をして1年間の決算書を作るのは税金の申告のためだけになっています。

このような会社の場合、一事が万事で記帳のための資料も揃っていないことが多く、会計事務所の側も苦労します。

会社の側も本当に利益が出ているのかがリアルタイムに分からず、業績が分からないまま進まざるを得ず、基本的にこのような会社の業績が好転することはあまりないと思います。

まとめ

業績が良い会社はやはり経理もしっかりしています。社長も毎月の試算表をちゃんとチェックしています。監査法人で上場企業の監査をしていた時も業績が良い会社は経理部のレベルが高く、精度の高い経営分析の資料を作っていました。

会計帳簿や試算表は乗り物に例えると速度計や燃料計などの計器のようなものだと思います。経理を軽視するということは計器を見ずに車を運転したり飛行機を飛ばしているようなもので、とても危険なことだと思います。

会計事務所の役割としては会計帳簿や試算表といった計器を提供するだけではなく、「発生主義」に基づいた精度の高い計器を提供することだと思っております。

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